人気のサイクルスポーツ。サイクルロードレースなどをはじめとする競技スポーツから、ゆっくり景色や食べものを楽しむサイクリングまで様々あります。そんなサイクルスポーツの魅力を、プロフェッショナルコーチの青山剛氏の視点で毎月発信していきます。


Vol.15「体幹で乗る!正しいフォームはコレだ!」

   ~チェックすべき3つのポイント~


ビアンキアンバサダーの青山剛です。

昨年から始まったこのコラムでは、サイクルスポーツの魅力や運動効果、そしてその正しい方法などをプロフェッショナルコーチの視点で紹介しています。だんだんと春も近づいてきて自転車シーズン間近ですので、今回からは数回に渡って自転車の正しいフォーム(ロードバイク編)について書いていこうと思います。

■正しいフォームとは?


自転車の正しいフォームとは、どんなフォームでしょうか?私はトライアスロンコーチとしてスイムとランも指導していますが、それら全てのキーワードとなるのが「体幹」です。

スイム、バイク、ラン全て「前に一方通行」に進む動きでは、いかに体幹を使って前に進むかが正しいフォームの鍵となります。腕や脚は体幹に比べて細かい作業は得意だけど疲れやすい性質があるため、特にランや自転車はいかに「脚を節約して乗るか」が体幹で走ることに繋がり、脚の疲労も抑えることが出来るのです。

■体幹主導の動きとは?!

さて、体幹を鍛えたら体幹で乗れるようになるのでしょうか?
答えは△です。腹筋が割れていても体幹で乗れていない方が多くいます。

体幹は鍛えるだけではなく「使える」ように準備してから自転車に乗らないと、体幹で乗れる=体幹主導で乗ることに繋がりません。体幹とは肩甲骨、股関節、腹筋、臀筋の4つのパーツに分けて考えていきます。

ではどんな準備をしたら良いかというと、このコラムでも紹介した最低限のストレッチをして、その後私の指導の真骨頂となる「体幹スイッチ・エクササイズ」を行ってから乗車します。まずは紹介したストレッチを必ず行ってから乗車するようにしてください。自転車用体幹スイッチは、追って紹介していきます。

*ストレッチはこちら!

その自転車用の体幹スイッチを紹介する前に、まず何はともあれ「目指すべき理想のフォーム」を紹介したいと思います。

■理想のフォーム3つのポイント!

理想の体幹主導で乗れているかを、3つのポイントで確認することが出来ます。

 ①ハンドルが引けているか?
 ②骨盤が立っているか?
 ③かかとが落ちていないか?

①ハンドルがひけているか?

        GOOD                       NG

どんなにゆっくり乗る時でもハンドルは少しでも引いて乗らないと、肩甲骨が可動しませんし、腹筋が使えません。ランでいう腕振りと同じです。ハンドルに寄りかかっている状態では、腕を振らずにポケットの手を入れてランニングをするくらい効率が悪くなります。特に小指と薬指でハンドルを引っかけて引くようにしましょう。スピードが上がれば上がるほど、この引く動作が大切になってきます。


②骨盤が立っているか?

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①が出来ていると必然的に骨盤がサドルに対して立ってきます。背骨に対しては後傾気味な状態です。そうすることでペダリングが踏むだけではなく身体の前で「回す」動きになり、引き足も使いやすく回転が上あがり、そして維持もしやすくなります。骨盤を前にかぶせる感じだと、踏み込みやすくはなりますが、回転が上がってきません。


③かかとが落ちていないか?

        GOOD                       NG

①②が出来ていると、かかとは落ちづらくはなります。かかとが落ちるとそのあと上げる動きを繰り返すことになり、ふくらはぎの小さな筋肉を多用してしまいます。またそのことで太もも前部(大腿四頭筋)も必要以上に使い、脚が疲れる最大の原因になります。かかとを高い位置でキープすることで、臀筋など体幹の大きな筋肉を使うことに繋がります。



■良くないフォームとは?!

②③の真逆になります。                                         この写真は極端ですが、こうなるとおそらく前モモはパンパン、回転は上がらず、腰はバリバリ、こんな感じにもなってしまいます。

      良いフォーム(空気抵抗)           良くないフォーム(空気抵抗)

また、自転車は空気抵抗との戦いでもありますので、写真のように悪いフォームで乗ってしまうと、空気抵抗が大幅に増えてしまいます。
例えば同じ300ワットの出力をペダルにかけても、これだけ空気抵抗の差が出てしまえば、速度差は歴然です。逆に同じ速度で走っていても空気抵抗が大きい良くないフォームで走ると、それだけで無駄に出力(ワット)を必要としてしまうのです。

次回は自転車用体幹スイッチ、といきたいところですが、その前に、効率の良いペダリング(ペダルの回し方)=「体幹ペダリング」をまずは紹介したいと思います。


これまでのコラム情報はこちら

■青山 剛 (あおやま たけし)

元トライアスロン日本代表。その後コーチに転身しトライアスロン女子五輪代表を輩出。現在はプロフェッショナルコーチとして競技者から子ども、シニアまで幅広い層にトレーニング指導を行っている。全国で講演、セミナー、教室なども開催中。著書多数。国内唯一のビアンキブランドアンバサダーとして、正しいサイクルスポーツの普及発展にもあたっている。