人気のサイクルスポーツ。サイクルロードレースなどをはじめとする競技スポーツから、ゆっくり景色や食べものを楽しむサイクリングまで様々あります。そんなサイクルスポーツの魅力を、プロフェッショナルコーチの青山剛氏の視点で毎月発信していきます。
Vol.13「危険!すぐに走っちゃダメ!」
~サイクリストのためのランニング方法~
ビアンキアンバサダーの青山剛です。
明けましておめでとうございます。
昨年から始まったこのコラムでは、サイクルスポーツの魅力や運動効果、そしてその正しい方法などをプロフェッショナルコーチの視点で紹介しています。今年も引き続き連載することが決定しましたので、どうぞよろしくお願いします。
■寒い冬でも乗りますか?!
さて、今年の冬も寒いようですが自転車には乗っていますか?アスリートや競技バリバリの方は冬装備をして乗られていると思いますが、ファンライドメインの方はやっぱりこの寒さの中乗るのは躊躇しますよね。でも運動はしておきたい気持ちもあるかと思いますので、そこで今回は普段自転車に乗っている方がトレーニングとして冬に行って欲しい「ランニングの方法」を紹介したいと思います。
■自転車乗りのランニングは危険?!
私は元々トライアスロン選手で現在はトライアスロンコーチとして指導もしています。五輪を目指すようなトップ選手は、だいたい子供のころに競泳を行っていて、その後トライアスロンに転向するパターンが多いのですが、転向後ランニング練習を始めてすぐに多くの選手が脚部を中心に故障します。特に多いのが足首の捻挫や膝の怪我です。
競泳は有酸素運動ですが、水中という重力の影響をほぼ受けない運動なので、「衝撃」を受けません。しかしランニングという陸上の運動では着地の衝撃を受けてしまいます。だいたい体重の3倍から5倍の衝撃です。心肺機能がとても発達した競泳選手が、何も準備をしないで走ってしまうと「走れてしまう」分、すぐにどこか痛めてしまいます。特に足首が柔らかい競泳選手はランニングではそれが仇となり、捻挫をしてしまうことが多いのです。
ポルシェのエンジンなのに弱い軽自動車のボディやタイヤ、それじゃ壊れてしまいます。
さて、この話は競泳選手がランニングする場合だけではなく、普段自転車ばかりを乗っている方がランニングする場合も同じです。自転車は陸上での運動ですが着地の衝撃はほぼありませんので、走る前にその対策(準備)を行ってから、ランニングに行くようにしましょう。
■ランニングする前にコレだけはやろう!
お正月に箱根駅伝を観て、急に走り出す方が増えるのがちょうど今頃です。そしてすぐに皆さんどこか痛くなってやめてしまいます。普段自転車に乗っている方も同様、いやそれ以上に気をつけないと、心肺機能が高い分、普通の人より初めに走れてしまう=怪我の危険がより高いわけです。
そこでまずはランニングの前には、以前紹介したようなサイクリストとためのストレッチ(静的&動的)を行ってください。
https://www.bianchi-store.jp/news/39356/
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プラスして、走る前に行って欲しいエクササイズをいくつか紹介します。
かかと上げ×20回
・ランニングだけではなく自転車も同じですが、しっかりと足の母指球に体重を乗せることで地面やペダルに力が伝わり前に進みます。この運動はそのクセ付けです。足を肩幅(げんこつ2つ分)で、母指球が分かりづらかったら「親指一本で立つ」イメージで20回上げ下げを行いましょう。
膝出しスクワット×20回
・これは膝をつま先の方向にまっすぐ出すクセ付けの運動です。自転車も同様にランニングの際、膝とつま先の方向がズレていることで膝の故障をしていまいます。また膝まわりウォーミングアップにもなりますので寒い冬は欠かさず行って下さい。
お尻突き出しスクワット×20回
・膝出しスクワットは膝を前に動かしましたが、これは膝が動かないようにしてお尻を突き出して戻します。お尻のちょっと下のあたりがランニングの際の「アクセル」になりますので、そこを刺激して使いやすいようにします。ポイントは少し上を見て、骨盤前に置いた手が突き出した時に股関節に挟まるようにことです。クックッとメリハリをつけて行いましょう。自転車のペダリング時の踏み込みも強くなりますよ。
各足踏み×20回
・これらは足首の捻挫予防の運動です。つま先立ち、かかと立ち、足の横立ち、それぞれ20回ずつ足踏みをしてください。慣れてきたら右回り&左回りなど行うとより捻挫予防にもなります。
■さあランニングへ!でもペースは?!
しっかりとランニング前のストレッチやエクササイズが出来たらすぐに走りたいところですが、普段あまり歩いてもいない方は5~10分くらい歩いてから走り出すようにしましょう。まずは10分走って10分戻ってくる、このくらいからのスタートが理想です。
ペースはとにかくゆっくりです。楽しくサイクリングしている感覚です。フォームはあまり気にせず「腕を引いて引いて」だけ少し意識して走りましょう。
ビアンキアンバサダーとしては、冬でも皆さんに乗ってほしいのですが、こうやって他の運動をシーズンや環境に応じて使い分けられる方が、とてもサスティナブルだと思いますので、冬はしっかりと準備してランニングをしてみてください。
Vol.1「サイクルスポーツの魅力とは?!」
Vol.2「移動がエクササイズに代わる乗り方とは?!~ママチャリでも美脚に!~」
Vol.3「サイクリングロードへレッツゴー!!」
Vol.4「グルメライドは絶対太らない!?」
Vol.5「あなたのサドルの高さ、合っていますか?!」
Vol.6「何を持って乗ればいいの?!」
Vol.7「えっ?!パンツ履かないの~?!」
Vol.8「サイクルロードレースとマラソンの違いとは?!」
Vol.9「サイクリストはカラダが硬い?!」
Vol.10「突然ですが、フランス行ってきました!」
Vol.11「サイクリストはカラダが硬い?!」
Vol.12「お待たせしました!ビアンキライド2024開催しました!」
■青山 剛 (あおやま たけし)
元トライアスロン日本代表。その後コーチに転身しトライアスロン女子五輪代表を輩出。現在はプロフェッショナルコーチとして競技者から子ども、シニアまで幅広い層にトレーニング指導を行っている。全国で講演、セミナー、教室なども開催中。著書多数。国内唯一のビアンキブランドアンバサダーとして、正しいサイクルスポーツの普及発展にもあたっている。