人気のサイクルスポーツ。サイクルロードレースなどをはじめとする競技スポーツから、ゆっくり景色や食べものを楽しむサイクリングまで様々あります。そんなサイクルスポーツの魅力を、プロフェッショナルコーチの青山剛氏の視点で毎月発信していきます。


Vol.8「サイクルロードレースとマラソンの違いとは?!」      
    ~サイクルロードレースを100倍楽しく観る方法~

ビアンキアンバサダーの青山剛です。

今年から始まったこのコラムでは、サイクルスポーツの魅力や運動効果、そしてその正しい方法などをプロフェッショナルコーチの視点で紹介しています。

これまではサイクルスポーツをいかに正しく楽しくDoするかを紹介してきましたが、今回はいかに面白くサイクルロードレースをSee、いわゆる観戦するかを超分かりやすくお話します。


■サイクルロードレースって何?!

自転車競技でも一般道を走るレースのことで、一番有名なのは先月フランスで行われた「ツル・ド・フランス」です。21日間で毎日200km前後を合計4000km近い距離を走るレースで、いわゆる「ステージレース」になります。今年はビアンキに乗るアルケアチームが第2ステージで勝利し話題になりました。

また一日でレースを完結させるワンデー(クラシック)レースもあります。五輪や世界選手権などはこちらで行います。

ステージレースは、各ステージのフィニッシュタイムの合計時間が少ない選手が総合優勝となり、ワンデーレースは着順がそのまま順位になるというわけです。その他にはタイムトライアルといって一人ずつ数分ごとにスタートしてタイムを競うもの、チームタイムトライアルといって同じチームメンバー数人で走りタイムを競うものもあります。


■マラソンとの違いはなにか?!

サイクルロードレースはマラソンと同じで1位を目指して走る競技です。しかしその中身はむしろ野球やサッカーなどの「チームスポーツ」に近い形になります。各チームにエースと呼ばれる選手がいて、その選手を勝たせるために他の選手がアシスト(サポート)をします。

野球でいうと1番から3番が塁に出て、エースの4番が打って得点を狙い「チームとしての勝利」を目指すのと似ています。

そしてサイクルロードレースの一番の大敵は「空気抵抗」。先頭や前のほうで走るのと後方で風よけをしながら走るのでは全く違います。アシストはエースの前を走って、エースのチカラをいかに温存させるかを、超高速の中で瞬時に判断しながら常に走っているのです。

例えば同じチカラの選手が4人一列で走っているとします。

先頭が100%のチカラを出しているとしたら、4番手で風よけをしている選手は60%くらいのチカラで走れると言われます。マラソンではここまではいきません。

マラソンは速くて時速20kmくらい。空気抵抗は時速20kmを超えると二乗二乗でどんどん増えていきます。サイクルロードレースは平地でも速い時は時速60~70km、下りでは時速100kmを超えることもありますので、まさに「空気抵抗をいかに減らして走るか競争」になり、チーム戦略なしではいくらエースが強くても勝てないのです。野球で4番などが打って得点できるように、その前の打順の選手が犠打を打つのとアシストは似ているのかもしれません。4番が凄いだけでは勝てない感じですね。


■どんなコースを走るのか?!

ステージレースもワンデーレースも一般道を主に走りますが、時には石畳区間、砂利道(グラベル)区間があったりします。また基本的に平坦、丘陵、山岳の3つのコースパターンに分類されるので、コースによって選手の得意不得意があり、それによってエースを代えたり、アシストメンバーを選出したりもあるのが、サイクルロードレースの面白いところです。



■どんな選手の特徴があるのか?!

基本的に100km以上を走ることが多いのでどの選手も持久系能力が高いわけですが、

その中でも選手の特徴=脚質を知るとロードレースが100倍面白くなります。

・スプリンター (ゴール前の爆発的な加速が得意)

・クライマー  (長い上り坂が得意)

・タイムトライアルスペシャリスト (単独走が得意)

・パンチャー   (勝負所でのアタック〈スパート〉が得意)

・ルーラー    (高速維持が得意)

・オールラウンダー (全部得意)

主に分けるとこんな感じです。

箱根駅伝でいうと山登りの5区はクライマーですね。マラソンの瀬古利彦さんのあのラスト100mのスパートはスプリンター、そんなイメージでしょうか。

ステージレースでは平坦、丘陵、山岳、タイムトライアルとコースが毎日変わりますから、まさにスーパーオールラウンダーが総合優勝を掴むことが多いのです。


■ジャージの色で特徴も分かる?!

先月終わったツール・ド・フ・ランスを目にした方も多いと思いますが、その中で通常のチームジャージではないデザインや色のウェアの選手が数名いたのを覚えていますか?

例)ツール・ド・フランス

・総合リーダー(合計タイム最速者)      →イエロージャージ 

・山岳賞   (山岳ポイント最多獲得者)   →赤水玉ジャージ

・ポイント賞 (スプリントポイント最多獲得者)→グリーンジャージ 

・新人賞   (合計タイムが25歳以下で最速者)→ホワイトジャージ

こうやって観ている人(時には選手間でも)に分かりやすくジャージの色を変えているのが、ステージレースの面白いところです。この他には世界選手権優勝者が白地に虹色ジャージだったり、各ナショナルチャンピオンジャージを着たりしています。総合優勝争いだけではなく、こういった各賞もあるのがサイクルロードレースの魅力です。プロ野球だと優勝争いが一番大事だけど、ホームラン王、首位打者、最多勝争いなども面白いのと似ています。

私はビアンキのアンバサダーを長年務めているので、やはり「ビアンキ乗車チーム推し」で観てしまいます(笑)。皆さんもぜひ推し選手、推しチームを作ってDoスポーツとしても、

Seeスポーツとしてもサイクルスポーツを楽しんで下さいね。最近は機材の進歩も凄いので。8月は3大ステージレース(グランツール)のひとつブエルタ・ア・エスパーニャも始まります!

Vol.1「サイクルスポーツの魅力とは?!」

Vol.2「移動がエクササイズに代わる乗り方とは?!~ママチャリでも美脚に!~」

Vol.3「サイクリングロードへレッツゴー!!」

Vol.4「グルメライドは絶対太らない!?」

Vol.5「あなたのサドルの高さ、合っていますか?!」

Vol.6「何を持って乗ればいいの?!」

Vol.7「えっ?!パンツ履かないの~?!」

■青山 剛 (あおやま たけし)

元トライアスロン日本代表。その後コーチに転身しトライアスロン女子五輪代表を輩出。

現在はプロフェッショナルコーチとして競技者から子ども、シニアまで幅広い層にトレーニング指導を行っている。全国で講演、セミナー、教室なども開催中。著書多数。

国内唯一のビアンキブランドアンバサダーとして、正しいサイクルスポーツの普及発展にもあたっている。